比丘尼の残夢【完】
「意味が! わかりません!」

たぶんそれが、医者の言っていた大人の事情なのかもしれないが。


「ご主人様はそれで良いんですか!?」

「うん、実はね、俺がそういうことにしておいてくれって頼んだんだ」

「!?」

なんだ? 聞いていたのと話しが違う。

家を乗っ取った弟に、閉じ込められているわけではないのか... !?


「あはは、宇治方がそう言ったのか。あいつの考えそうなことだ」

確かに、『俺はそうじゃないかと思ってる』と言う仮定の話であった気がする。


「は? じゃあ、自分で好き好んでこんなところに?」

「めんどくさくなっちゃってね。
好いた女が居たんだけど周りが一緒にさせてくれなくてさ。
何とかしようとしている間に流行病で彼女が死んじゃって」

「私がお墓参りに行ったあの人ですね... 」

芸者の比丘尼とお金持ちの長男... 障害は多そうだ。


「そうそう。すっかり人嫌い。
だーれも信用できなくなって、誰にも会いたくないからここにいることにしたんだ」
< 61 / 104 >

この作品をシェア

pagetop