比丘尼の残夢【完】
居間のガラス戸に映った自分を見て満足したようだ。

それからご主人様はお昼の入道雲の空を見上げた。


「しかしあっちぃなぁ... 」

「仰ぎましょうか」

鋏を持った手を交差させて私は言った。

団扇と扇子の両刀でやりますよ。


「あ、それより良いものあるぞ。ここに裏口のタライ転がしてこい」

「合点です」

そう言って自分は家の中に戻って行った。



タライは結構重かった。

汗を拭っているとご主人様が戻ってきた。

手には薬缶と製氷機。

うわぁ! 気持ちよさそう。


「持ち上げたのか? 転がせばいいんだ、阿呆だなぁ... 」

「そ、それよりも早く!?」

泳ぎたい!!


「足浸すだけだよ... でも結構気持ち良い。
お婆ちゃんが教えてくれたんだー」
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