比丘尼の残夢【完】
薬缶一つ分のお水では勿論足りなくて、私は水場と何往復もすることになった... 。

タライが一杯になるころには、氷は半分以上なくなっていた。


「ご苦労」

ぜぇぜぇと息をつく私を涼しい顔で見て、水が半分くらい溜まったころからご主人様は足を入れて涼んでいる。


やりますよ、私は元気な女中。

貴方は病気のご主人様ですから。


「極楽」

いいなぁ。

でも思ったより小さいものだな、タライって。


指を咥えて見ていると、手招かれたのはご主人様の足の間!

確かにそこでしたら入れそうですね。


「... でも逆に暑くないですか」

そんなところで密着してしまったら。


「つべこべ言うな」

氷水の誘惑には勝てずに、私は草履を脱いでそこにお邪魔した。


「ひゃっこーーーい!」

「ねー!」

いつか田舎に帰ったら、弟たちにもやってあげよう。
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