比丘尼の残夢【完】
声はいたって普通だ。

たしかに濡れた服越しに肌は密着していて、いつか何処かにある氷は溶けるのかもしれない。

でもこんなに狭いところで足をからませて、そんなところに顔があると... 。

足の指ってこんなに器用に動くのか...

耳を食む行為は、この場合必要か?


「気持ち良いな」

「そ、そうですね...... 」

固まった。


「ナナミ... 」

後ろに着いた手を上から握られ、もう片手が私を振り向かせる。

これはまた接吻されるのではないか!?


「ぎゃ、ぎゃー!!」

驚いたのはその行為にではなく、振りむいた所に人が立っていたからだった。

その人物は腕組みしたまま呆れ顔で近づいてきて、両手でタライの水を掬いとると、驚いてやはり固まっているご主人様の頭からかけた。
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