比丘尼の残夢【完】
その間に医者はご主人様の手首をひねりあげると、引き摺っていってしまった。


「おらっ、お前は来い! 二度と煩悩が湧かないように一番太い注射打ってやる!」

「いやあ! 助けてナナミ!」

「餓鬼はお片づけだ!」

家に入ってしまったが、まだギャーギャー聞こえてくる。



「...... 」

ようやく、私の世界に蝉の声が戻ってきた。


「なにやってるんだろ、私... 」

背に残るご主人様の熱い肌の感触。

寒くもないのに今更体が震える。


性奴隷にでもなりかけているのだろうか。

日差しで沸騰したらしい頭では、わけがわからなかった。
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