比丘尼の残夢【完】
接吻はしました。

なんて私の口から言えるわけないじゃない!?


「じゃあ良い。現実的な話をわかりやすくしてやろう」

「へぇ... 」

「ここは無人島だ。そこに嵐で流された君が来てあいつと二人きり! そういう状態なんだ、わかるか」

「へぇ... 」

言われてみると、この離れってそんな感じだ。


「二人は普段街で会えば別段好みでもなく、年が離れているから好意なんて持ちようもない。
でも本能が子孫を残さなければと考えるから、相手の事を好きになったような錯覚をする。
それが今の君らだ」

「年なんて関係ないですよ... 」

隣村の美しい姉さんは、30も年の離れたお金持ちの後妻になったと聞いた。


「今はそう言う話しじゃない。
あいつはね、婆さんと長くこの無人島で二人きりだったの。
そこに来たのが君ね。
世間にいる俺には君は子供にしか見えないけど、無人島にいるあいつには若い女にしか見えない。
君は愛されているわけじゃないのよ?」
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