比丘尼の残夢【完】
「わかり、... ます」

ご主人様がたぶん、女の人なら誰にでも優しい人なのは私にもわかる。

ここに私しかいないから、私に優しいのだとも。


「別に好きになるのは良いだろう。あいつが健康な体で、一生君を愛人として囲うと言うならそれも良い」

愛、人...... !


ヨロリと私は後ろ手をついた。

そーだ、女中とご主人様とは本来、いたせば世間からそう呼ばれる関係になってしまうのだ。

二人きりだから全然そんな風に思わなかった... !



だって言う人いないし。


「でも死んでしまうかもしれないんだぞ?
売女でもない君の身体を傷ものにして、嫁に行けない君を残して行くってのに、許されると思うのか。
俺は許せないね」

医者は、私を心配してくれているらしいとようやくわかった。

と言うか、医者の言いたい事がようやく。


何時か流されるように身体を重ねてしまえば、もう私はお嫁になんていけないのだ... 。
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