比丘尼の残夢【完】
ご主人様が死んでしまうことなんて考えたくはないけれど、愛人にすらなれなかった私の行く末は......



比丘尼になるしかない。


正直そこまで全く考えていなかった。

手をついて口を押さえた私に、しゃがんで視線を合わせた医者は、今度は優しい声で言った。


「君に、ここまで言って済まない。
でもあいつはもう君の事を子供だとわからない時点で普通じゃない。
自分の身体は自分で守りなさい」

「・・・へぇ」

「嫌がる事を無理やりする奴ではないと思いたいけど、正直わからないな。
怖いなら、暇を貰ってここを早く出るんだ」

それは、嫌だ。


昼間、話してくれたのだ。

医者にも言っていない秘密を。

他人事のようにだったけれど、もう私は入りこんでしまった。

そこはあの人の気持ちの何処かなのか、比丘尼の呪いの中なのか・・・。
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