比丘尼の残夢【完】
お花が入っていない時で良かった... 。


破片は綺麗にまとめてくれていたが、水はそのままになっていた。

打ち水代わりに放っておくことにした。


もう暦は秋だと言うのに暑い。

脳味噌溶けそうだ。


たぶんご主人様は溶けかけている。

でもあの人は、元々溶けている人なのかもしれない。



割れた欠片を紙袋に移して部屋に戻ると、ぼんやりと庭の野良猫を眺めていた。


「あー、俺も猫になろうかなぁ... 」

うわぁ、今度は人間やめようとしてる。

呪われてるならきっと猫又だ。


「猫になってどうするんですか... 」

「煮干しを食って喜ぶんだ。マタタビで気落ち良くなるんだ」

「左様でごぜえますか... 」

なんだか元気ないなぁ。

具合でも悪いんだろうか。
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