比丘尼の残夢【完】
寝てくれたら良かったのだ。


「なんで泣く。そろそろここから出たいだろう」

「嫌です。ご主人様と離れたくありません」

その言葉で、私もこの人をここに縛ろうとしているのか。

ご主人様は黙った。


そうではないことを伝えたくて、「手術して下さい」と私は続けた。


「然してだな、... 俺は思う。
元気になったところで、なにか楽しいことが待っているのか」

「ありますよ! 楽しいことたくさん!」

「例えばお前さんが、元気な俺になら純潔処女を捧げてくれるだとかな?
つまりやらせろ、ということだ」

「...... 」

真剣な顔で何を言うかと思えば。

また冗談で〆られた。


「... どうぞ?」

「へ」

「手術を受けてくださるなら、私の身体の一つや二つ、お好きにしてくだせえ」

何を言われたのかわからない、という顔をした。
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