比丘尼の残夢【完】
でもこんなに食べきれないよね。

台所でお茶を淹れながら、栗入りのほうをひとつ頂いた。

あまりにも美味しく、このギュウヒ入りのほうも是非... 。

さらにひとつをパクと咥えて、医者専用のお茶受皿の上に数個置き、お盆を手に持った。



「お茶が入りましたぁ」

「注射終わったから入っていいぞ」

もう見慣れましたったら。

テーブルにお茶とお皿を並べていたら、2人がそれをじーっと見ていた。


「お前先に食ったな」

「えっ、なんでわかりました?」

ついてます? 最中の欠片。


慌てて口を拭うと、医者が悲しそうな顔をして腕時計を外した。


「この時計とも短い付き合いだった... 返すよ」

「お前さんが最中食うかどうか賭けてたんだ。よく食った!」

「...... 」

褒められても嬉しくない。
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