比丘尼の残夢【完】
「君のお行儀は全く良くならなかったな」

医者に嫌味を言われても大丈夫。

ご主人様が勝ったんですね、良かったですよ。


「ああ、そうだ。この時計は取り返してくれたお礼にお前さんにやろう。
宇治方に博打で獲られる前は、仕事の時俺がずっと使ってたんだ」

「!? ご主人様は何を賭けてたんですか」

「土地」

一体どういう値段の時計なんだろう。ごくり。


生活に困ったら売ろう。

ご主人様が病院に行ってしまえば、私は無職だ。

兄ちゃんのところに一度戻ってみるつもりではあるが、出てきたときのような状態ならまたすぐに追い出されてしまうだろう。


「そうだナナミすぐ準備にとりかかってくれ」

「へ」

「すぐに入院させたい。
本当は今から連れて帰りたいんだけれど、長くなるからいろいろ準備もあるだろう。
明日の朝迎えに来る」

明日の朝... !
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