比丘尼の残夢【完】
またそんな突然!?


お別れになるのは分かっていたけど、そんなに急だとは思わなかった。


吃驚してご主人様を見た。

相当心配そうな顔をしてしまったのか、安心させるようにご主人様は笑った。


「パパッと直してすぐ戻ってくるよ」

「殺しても死なないよ、こいつは」

そうですよね! こんなに元気ですもんね。




「ナナミ、こっちだ」

小声で玄関の物陰から私を呼んだのは、帰ったとばかり思っていた医者。


「なんでしょか」

「さっきはああ言ったけどな... 」

深刻な顔で医者が話しだしたのは、想像もしていなかった内容だった。


「これだけ放っておいて、治ったなんて話は聞いたことがない。
手術できる体力が残っているのかも怪しいし、今の状態でやったって生存率は良いところ数パーセントじゃないかと思う」

数パーセントの意味はよくわからないが、死んでしまう確率のほうがものすごく高いのはわかった。
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