比丘尼の残夢【完】
あ、2人分って、ご主人様と私の分のことではない。


ご主人様とお別れの前夜祭で、めでたく私は身籠ってしまったのだ。

ご主人様、最後にプレゼントをありがとうございます。

初産だったというのにそれはもう素直に生まれてくれた。

男の子。

ご主人様に似ているから、まだ首も据わらないけれどきっと育ったら悪戯好きになる。


「あの時ナナミが奉公に出てくれたおかげで、一家心中しないで済んだんだからな... いまみんなが生きてるのもお前のおかげだ。
遠慮なんかしなくていいぞ。子供の面倒も俺が見てやる」

「兄ちゃん酔っぱらうと必ずその話する... 」

もう聞きあきた。


「ずいぶんお給金が良いからなんの仕事してるんだべと心配してたら... 
まさか子供のお前が孕まされて追い出されるとは! うぅ... そのうちのご主人てのさぁ、鬼だべ! 悪魔だべ!」

「いや、追い出されてないし... 何度言ったらわかってくれるの?
ご主人様は病気で病院に入ることになったんだったら。
子供ができたなんて知らないだけだったら」
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