きみに愛を唄う
かすかに聞こえた音に、息を潜めた。
これは・・・、
「ウタ、声・・・?」
辺りを見回す。
その音源を探して。
そして、
「あ・・・っ、」
数十メートル先、潰れた店のシャッターの前に、人影があった。
今も鳴り止まない唄に、あたしの足は早足で駆け寄っていた。
荒い息を整え、あたしは立ち止まった。
さっきまでは、数十メートルも遠くにいたのに、今は・・・
目の前に。
俯いて、アコギを抱えて唄うその人の声は、
あぁ、なんて・・・
「きれい・・・。」