きみに愛を唄う
「・・・最近から。」
小さい声だったが、目の前のその人は、確かにそう答えた。
たったその一言、しかも小さな声だったのにも関わらず、その音色はとても響いて。
空気が、震えた、気がした――。
「そ、っか・・・。」
あたしも小さく返事をした。
そして訪れた沈黙。
けれど、どうしてか重苦しくなくて。
あたしはおにーさんの前に膝を抱えて座り込み、目を伏せた。
『・・・~~』
不意に鳴った音に顔を上げると、おにーさんがゆっくりと手を弦に滑らせていた。
そして少しして、その音に乗って、おにーさんの歌声が重なった。
寒さのせいか、少し赤くなっているその薄い唇から発せられるその音色は、やっぱり透き通るようで。
いや、透き通っていた――。
そうして、あたしの身体に、心に、染み渡って、
――どうしようもなく、胸をかき乱した。