Painful Love※修正完了※
第6章『別れ』
カフェを出てマンションへと帰る。
カフェを出た瞬間、暑い日差しが体を照りつけた。
……佐奈子さん。
すごく拓斗の事が好きなんだって分かった。
お揃いの婚約指輪を愛しそうに見つめる姿に、
自分の胸の奥の方が痛んだのは気付かないふり。
佐奈子さんは私がここに戻ってきた事により婚約が破棄されてしまう事を不安に思っていたみたい。
……心配しなくても大丈夫なのに。
拓斗だって考えて佐奈子さんと婚約してるんだから、
簡単に破棄なんかしない。
それこそ、責任感の強い拓斗なら。
やっとマンションに着いて日陰に入る。
暑さにうんざりして思わず溜息を吐いて、エレベーターへ。
……毎日乗ってたなぁ。
このエレベーターも。
佐奈子さんには思わず『明日帰る』と伝えてしまったけれど、それはあの場で咄嗟に思いついた事。
……このマンションで寝泊まりするのも今日が最後。
そう思うと、寂しくなる。
何年もここに住んでた。
わたしの人生の殆どの家族の思い出が、ここにある。
段々上がっていく階ボタンの上にある表示を見ながら、
思い出し笑い。
……そういえば、一時期エレベーターに乗れなくなった時があったなぁ。
こういう暑くなってきてエレベーターが必要な夏場に限って、
これまた夏恒例の怪談話のせいで。