遥かなインド
「旅先の宿に誰かが置いて行った日本語の日本文学の本とか難しい物理の本を読む瞬間が今は一番幸せかもしれない…
自分の時間に浸れる様な感じがするんだ。
読めば読むほど

“嗚呼、日本語って素晴らしい、文章って素晴らしいな”
って思うんだ…」

まるで独り言の様に寂しそうな感じで松さんは言った。
松さんはソファーから起き上がると、
再びビリヤード台へと向かった。

 なんとなくだけれど松さんのその後ろ姿が寂しそう見えた。
これが夢だと思ってやったことが実は夢ではなく単なる課程にしか過ぎないということを感じた。

私自身も世界一周をしようか迷っていた時期だったから
同じ志を持った若者の言葉が胸を差した。

“世界一周をしても人生の答えなんて見つからない”

それがその時の旅の一番の収穫だった。


“あまりにも時間があり過ぎて自分が何をしたら良いのかわからなくなる時があるんだ。”
 

よく暇を持て余し過ぎることは害になると聞いたことがあったけれどまさしく松さんが言った言葉に当てはまることだった。
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