遥かなインド
―ある夜、ユースホステルの談話場所みたいな所で松さんと他の日本人と歓迎会みたいなことをやった。
お酒を交わしている時にふと私は松さんにある質問をぶつけてみた。

「この世界一周の旅が松さんにとって夢ですか?」

「・・・・」

松さんはしばらく黙った沈黙の後、重い口を開き始めた。

「世界一周はただの自己満足だよ。
たとえ世界一周したってそれが他人に認められて収入源になることじゃないしね…」

それを聞いて私は驚いた。
ブログとかで一生懸命文章を書いたり世界中の旅の様子を書いている人から出る言葉ではないと思ったからだ。

「松さんのしていることは素晴らしいことです!自分の時間で自由に旅をして美しい景色を追い求めたりできることって素晴らしいと思います!
どうしてそんな悲しいことを言うの?」

私は疑問で仕方なかった

まさか、日本からわざわざ会いにきて聞かされる言葉だとは思わなかったからだ。

―私のこの数日は一体なんだったのだろう?
バイトして、
お金も貯めて 
ギリギリの予算で中国の内陸部まで来て 
言葉もわから中
もがいてここまで来たのに…

私の中で積み上げていた松さんへの憧れが一気に崩れて始めた。

それはまるで幼い子供が一生懸命積み上げた積木がある一点でガラガラガラ…と崩れ落ちるかの様だった…

私は下を向き信じられない様な顔をしてただ唖然としてしまった。

そんな私を見て 松さんはさらに話し始めた…
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