「金剛戦士Ⅱ」西方浄土
理絵は、話し掛けてきた老人に
「四万十市の、お店で鰻料理を食べていた時に、隣のテーブルで食べていた人から教えてもらった話で、本当の話かどうかは知らないのです。私は鮫だったらば、まだしも、まさか魚で人を飲み込むようなのは、いないと思うのだけれど・・・」
と言うと老人は
「なかなか興味が湧く話ですねぇ。いやあ、そんな魚がいるなら、ぜひ一度は拝見したいものですね」
と話す老人を、勇太はどこかで見たような気がして、誰だったかを懸命に思い出そうとしていた。
「そうでしょう。見てみたいでしょう。生きているのが現れると怖いけれどね。死んでいるやつだったら大丈夫だから見てみたいわ」
と言いながら、由紀が老人の顔をじっと見て
「あれ、どこかで、お目にかかったかしら」・・・
一瞬、誰だったかを思い出していたが
「そうだ、確か昔、官房長官をされていた前野大臣じゃないですか」
と由紀が顔を思い出して、老人に向かって訊ねると、老人は右手の人差し指を口の前に立てて
「あまり大きな声で言わないで下さい。私は官房長官をしていた前野です。でも、よく分かりましたねぇ。私が官房長官をしていたのは、かれこれ十年以上前ですし、官房長官だった期間も、そんなには長くは無かったので、今では忘れ去られてしまって、すぐに気づく人も、あまりいなくなったのですがねぇ」
「四万十市の、お店で鰻料理を食べていた時に、隣のテーブルで食べていた人から教えてもらった話で、本当の話かどうかは知らないのです。私は鮫だったらば、まだしも、まさか魚で人を飲み込むようなのは、いないと思うのだけれど・・・」
と言うと老人は
「なかなか興味が湧く話ですねぇ。いやあ、そんな魚がいるなら、ぜひ一度は拝見したいものですね」
と話す老人を、勇太はどこかで見たような気がして、誰だったかを懸命に思い出そうとしていた。
「そうでしょう。見てみたいでしょう。生きているのが現れると怖いけれどね。死んでいるやつだったら大丈夫だから見てみたいわ」
と言いながら、由紀が老人の顔をじっと見て
「あれ、どこかで、お目にかかったかしら」・・・
一瞬、誰だったかを思い出していたが
「そうだ、確か昔、官房長官をされていた前野大臣じゃないですか」
と由紀が顔を思い出して、老人に向かって訊ねると、老人は右手の人差し指を口の前に立てて
「あまり大きな声で言わないで下さい。私は官房長官をしていた前野です。でも、よく分かりましたねぇ。私が官房長官をしていたのは、かれこれ十年以上前ですし、官房長官だった期間も、そんなには長くは無かったので、今では忘れ去られてしまって、すぐに気づく人も、あまりいなくなったのですがねぇ」