「金剛戦士Ⅱ」西方浄土
夕方、双海町の海岸に到着して、車から降りて、真知子お婆ちゃんが

「この天気じゃあ、全く夕日は見られないわねぇ」

と夕日が沈んでいく筈の伊予灘を見ている。

空の雲は厚く、茜色に染まることなく暗くなっている。

少しの間、海岸に居たが、いつまでも留まっていても仕方が無いので、宿に向かった。

宿に着いて、玄関に入ると、玄関脇に美しい風景の写真が飾ってあり

「綺麗ねぇ・・・」

理絵が、その写真を見て言った後、しばらく、じっと見ていて

「この写真の手前に写っているのは、よく駅のプラットホームで見かける駅名を書いてある標識じゃないの」

と言うので、見ていた由紀も

「そうよ、そうだわ。駅のプラットホームに立っている駅名を書いてある看板だわ」
と言った。

看板ではなく、駅名標と呼ぶのであるが、都会の駅などではプラスチック製で壁とかに掛かっていたり、屋根から吊り下げられていることが多く、プラットホームの端の方に立っていたりする。田舎の駅員の居ないような小さな駅や古い駅では駅のホームに立っているものが多い。

上部には現在の駅名が大きく書いてあり、その下が半分に区切られて、左右に前後の駅名が書かれている駅名標が写真には写っている。

写真の半分から下には、そのプラットホーム上の駅名標の横で女子学生らしい人影が海を見ている背中が写っていて、その向こうには、彼女が見つめている海と水平線と青空が広がっている。
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