「金剛戦士Ⅱ」西方浄土
壁には並んでもう二枚、写真が飾ってあり、そのうちの一枚のほうにはホーム上にある待合用のベンチと屋根とベンチに腰掛けて海を見ている女子学生が、日中の明るい海と島と水平線の上に広がる青い空を背景に写っていて、もう一枚には夕景でベンチには誰も座っていずに、空を真っ赤に染めて海に没しようとしている夕日が写っている。

写真を見た感じでは、ホームの、すぐ向こう側が海に見え、まるで駅は海の上に建っているかのように見える。

「これって駅のホームよねぇ。すごいわねぇ・・・駅のすぐ真下は海みたいだわ」
と由紀が言う。

「本当・・・駅のホームから海に飛び込めそう」
と理絵も言い、勇太も

「素敵なロケーションだね。こんな駅があるのか・・・」
と話していると、宿の人が

「綺麗な写真でしょう。写っている駅は下灘駅といって、ここから五キロくらい行った所にあります。昔は日本で最も海に近い駅と呼ばれていたそうです」
と教えてくれた。

理絵が駅の、すぐ前が海なのか訊くと、宿の人は

「残念ながら本当は駅と海の間に国道が走っていて、駅から海に直接、飛び込めるほど海が近いわけでは無いのですが、写真の撮り方で、このように見えているのです」

聞いていた由紀が

「な~んだ、そうなの、残念だわ」

由紀は何が残念だったのだろうか。駅から海に飛び込みたかった訳でも無いだろうに・・・

六人がロビーで相談をして、明日あの写真に写っている駅へ行ってみようと話をしている。
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