「金剛戦士Ⅱ」西方浄土
「昨日、発見された物体は、現在、海流の影響だと考えられていますが、少しずつ東の方向へ移動しております。また昨日の時点で物体上には小笠原東方海域で消息を絶った日本の海洋調査船が見つかっており、今日の早朝には、もう一隻、船が現れてきて、東シナ海で行方不明になった大型コンテナ船であると、先ほど確認されました」

「なぜ今朝になって新たに大型コンテナ船が、現れてきたのかというと、どうやら物体は、ゆっくりと回転を始めた模様であり、物体が回転する事により、これまで海中にあり、上空からは見えなかった大型コンテナ船が見えだしてきたのではないかと考えられます。ただし、どうして回転を始めたのかは、海流の影響かも知れませんが、詳しくは判明しておりません」

李は、一呼吸して息を整えた後、続ける。

「私どもは、これまでの経過を検討して、ひとつの仮説を導き出しました。それは」・・・

李は会議場を見渡しながら言った。

「物体は、無機物生命体の可能性があるのであります」

会議場の誰もが、二年前の無機物生命体が来襲した時の事が、未だに忘れられずに、悪夢として心に刻まれている。

李の発した言葉に、その悪夢を思い起こし、極度の緊張に包まれ、凍りついたようになっている。

「仮説を導き出した経緯については、各国政府に送った文書に記してあるとおりでありますが、事の発端は一昨年の暮れに北海に落下した隕石にあると考えられており、その後、引き続き世界中で発生した大型船や特殊船などの遭難事故が、関係しているのではないかと疑っております」
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