「金剛戦士Ⅱ」西方浄土
乗船客は由紀たち以外に親子連れの家族と熟年の夫婦が乗り込み、総勢で十一人である。

由紀たちの乗る船以外に、もう一隻ホエールウォッチングの客を乗せた船が出港してゆく。

二隻は港を出て、しばらくの間は並んで航行していたが、太平洋に向かって進んでいくうちに徐々に離れて行った。

由紀たちの乗っている船の船長が、二隻が別々に離れて鯨を探した方が、鯨を早く発見できるのだと言い、互いに連絡を取り合っているので、見つかれば、すぐに鯨の泳いでいる所に行けるらしい。

船が沖に出てゆくと、最初は徐々に離れてゆく僚船が見えていたのであるが、そのうちに見えたり、消えたりするようになってきた。

遠くに離れてはいるが、台風の影響だろうか、うねりが出ていて、波長の長い小山のような波が、二隻の船と船の間に立ちはだかると、二隻の船は波の谷間に入るかたちとなり、双方の船とも小山のような波に邪魔をされて、お互いに視界から消えて、波しか見えなくなってしまう。

波の谷間と谷間の間の距離は、数百メートルか、それ以上ありそうである。

客として乗っている熟年夫婦の話だと、以前に旦那さんの方が、太平洋に船釣りに来た事があり、釣り船が出港した港は、こことは違うらしいが、その時は陸地が遥か遠くに見えるようになるまで、もっと沖にまで出て行ったらしい。

そうすると暖流の日本海流が黒潮と呼ばれている通り、ある地点を過ぎると、海の色が透明感のある黒い色に見えるようになって、なるほどと思ったそうだ。
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