雨催い<短>


傘は持ってきてない。



この彼を想う感情も、先輩に対しての憎しみも彼に対しての憎しみも、涙もろとも洗い流してほしかった。








雨とは違う生暖かい雫はいまだに頬をつたう。





「うっ、うっ」


自然にしゃくりあげてしまうこの現象を止めようとも思わない。








どれくらい歩いたか分からないけど、目の前には電柱が見えた。


汚いとは思ったけど、力なくそれに寄りかかった。







何やってんだろ…。






頭は異常なほどに冷静なのに、涙がとまる様子はない。
胸が苦しい。










『どうして泣いてるんだ?』


「っっ!?」



ざざぶりの夜中、しかも後ろから声をかけられるなんて思ってもないから体が嫌でも強ばる。



「ど、どなた、グスッですかっ?」




『どうして泣いてるのかと聞いているのだが』




いきなり何なのこの人、怖くて振り向けないっ。




「その、悲しいからです」



答えたらどっかいってくれるよね…。





『どうして悲しいんだ?』


うぅ〜、本当何なの?




「失恋なんですっ!もうほっといて下さっ、……い……」



勢いよく振り返って、声を失った。



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