アクアマリンの秘密
「おっしゃる通りです。あたしは…現場にいたわけではありませんし。

…燈龍さんの遺品はありますか?
もしあれば…それに触れるだけでその現場を読み取れます。
燈龍さんの想いが強ければ…燈龍さんが本当にあの時何を思ったかも読み取れると思います。
そして読み取ったものを偽りなく、あなたに伝えることも出来ます。
ですが…あたしはそんなこと…したくないんです。
あの時間は…あの場にいた人だけの時間です。そこにあたしが入るのは許されない。
でも…そんなことしなくったって…もう充分でしょう、椿様?」

「充分…?」

「椿様…あなたは弟である燈龍さんの気持ちも全て分かってたんじゃないですか?」

「何を…。」

「それでも…燈龍さんが亡くなってしまったことに対して…気持ちの整理がつかなくて…。
何かを恨みの対象としないと…正常でいられなかった。
だから…白斗さんをその対象にしたんじゃないですか?」

「…。」

「燈龍さんを失った悲しみを…怒りをぶつけることが出来る身近な誰か…。
それが当時のあなたには必要だった。
そして長い年月をかけて…余計にねじ曲がってしまった気持ち…。
あたしの言ってることが間違っていたなら否定してください。」



あたしは椿様の反応を待った。
きっと唇を噛みしめている。

そして意を決したように口を開く。


「そなたは…なぜそう思ったのだ?」



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