アクアマリンの秘密
「椿…様…?」

「…分かっていた…。私は…分かっていた…。」


そう言いながら涙をポロっと零す椿様。


「分かっていた…憎しみや恨みの感情を糧に生きても虚しいだけだということも…
燈龍がそのような生き方を望まないことも全て…分かっていた。
それでも…恨まずにはいられなかった…
どうしても…なぜあの時救ってくれなかったのか…そればかりを考えてしまう自分がいた。
恨みの感情は…生きる力をくれる。
私の心を繋ぐには充分だった…。
白斗を恨んでいれば…それを糧とし生きることが出来た。

…すまないな…白斗よ。」


白斗さんはパッと顔を上げた。
そして椿様を優しく見つめる。


「いいんです。
あなたのことを恨むつもりなどありませんし、あなたがオレを恨むのは当然だと思っていましたから。」

「すまない…としか…言えない…私は…。」

「頭を上げてください。
…オレが全てから逃げていただけです。
燈龍の死に向き合おうとしなかったのは…オレなんです。
だから…オレには…あなたを責める権利がない。

…どんなに後悔したって…もう二度とあの時間には戻れないんです。
それなのにただひたすら後悔して、進もうとしなかったのは…あなたではなくオレです。
あなたのおかげで…そして星来のおかげでようやく進めます。」



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