アクアマリンの秘密

「あたし…あたしには…大切な人がいたって記憶がないから…想像することも出来ないの。
その大切な人を失うことの辛さも…全部。
きっと触れれば読み取れるけど…それはちょっと違う。
自分の経験からじゃ…何も分からない。
それに…。」


蒼刃は何も言わない。
でも、ちゃんと聞いててくれてるってことだけは分かる。


「きっと『好きな人』は特別だから…、余計…。」


あたしには人をそこまで愛した記憶がない。
誰かを一番大切だと思って、その人を愛してるって口に出来るくらいの気持ちを持ったことが…ない。少なくともこの3年間では。

でも…紫紀さんの目は…。
あれはきっと、『特別』な人を見る時の目だよ。
紫紀さんにとって…華央さんは特別。
華央さんと同じ顔をした…フェイさんがそれにだぶって見えてしまって…揺らぐくらいに。



「好きな人は特別ねぇ…。
なんか女みてぇな発言だな、それ。」

「あっ…あたし、正真正銘女の子だけどっ!?」

「ふーん…普段勇ましすぎて忘れてた。」

「何ですって？」



あたしはぱっと蒼刃から離れた。
一発叩いてやろうと思って、離れたのに…。