アクアマリンの秘密
朝霧紫紀は本当に自分の言ったことを守ってくれた。
私が泣き止むまで決してこっちを見ることはなく、何も話さなかった。



「…気が済んだか?」

「…もう何も言わないって言ったじゃない。」

「本当に嫌われているな、俺は。」

「え?」

「そんなに俺が嫌いか?」


な…何を言ってるのこの人…?
そ…そりゃあ嫌いだけど…あからさまに態度でも示してたけど…
でもそんな風に単刀直入に聞く人なんて生まれて初めてよ。
だから私はその質問に面食らった。
何て答えればよいのだろう?


「そっ…そんなことないわ。」

「…嘘が下手だ。」

「なっ…あんたにそんなこと言われる筋合いないわ!!」

「確かに。でも…。」

「?」

「俺のことが嫌いでも、目を見て話してくれるんだな。」

「え?」



指摘されて気付く。
嫌いなら顔も見たくないはずなのに、私はなぜかちゃんと彼の目を見て話をしていた。
というか、冷静に考えてみれば…なんで私、こんなやつと口をきいているんだろう?
別に全部無視すればいいだけの話なのに…。

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