アクアマリンの秘密
「お前の欲しいものは何かと聞いている。」

「…聞いてどうするの?」

「出来ることなら叶える。」

「願いは自分で叶えなくちゃ意味がないわ。」

「…確かに。でも自分でどうしようもないから口にしたんじゃないのか?」

「え?」

「とにかく言ってみろ。
案外叶うかもしれない。すぐに。」

「…嫌よ。
あなたには泣き顔を見られただけでも一生の不覚だっていうのに、これ以上何かあっちゃ困るわ。」

「俺は困らない。」

「私が困るのよ!!」

「なぜだ?」

「なぜって…。」



そこまで言って言葉に詰まる。
別に正当な理由はない。

こんな気持ちをこの男に言ったって、恥を晒すだけだ。



「…私、帰るわ。」

「もう…平気なのか?」

「そうね…まあまあってところかしら。
でも私は…いつまでも泣いているわけにはいかないのよ。
それこそあなたが言ったように『有坂華央』だから。」



『有坂華央』は本来、決して自分以外の人間には弱みを見せない存在だから…。


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