アクアマリンの秘密
「紫紀…全部…終わらせましょう。
星来…ごめんなさいね。私の中に造られたフェイとしての狂気を抑えてもらってしまって。」

「え?」

「…無自覚かしら?
あなたはきっと…私の中の記憶を呼び覚ます魔法を使ったんでしょうけど…
それは元々人間に対してしか発動しないものよ。
だから…もう人間ではない私にはうまく作用しないはずだった。」

「どういう…ことですか?」

「…私の記憶を呼び覚ますためには…私の中のフェイを抑えなくちゃならない。
あなたは…意識しないうちにフェイの狂気を先に抑え込んでいたのよ。その膨大な魔力を使って…。
そして私が『本当に私』になったその瞬間に、あの魔法を使って私の記憶を呼び覚ました。
だからさっき言ったでしょう?あなたが成功したのは、記憶を呼び覚ます魔法だけではないと。
あなたは人の心の悪を抑え込む力がある。今は一時的だけどいずれは…もっと。

…でも…そろそろ限界ね。
あなたの魔力を全て使い切ってしまうなんて、そんな危険なことをしてはいけない。
まして…私なんかのためには、絶対。
倒れてしまうだなんて力の使い過ぎよ、星来。
…もっとも…使わせてしまったのはこの私ね。
だから…ごめんなさい。素直に謝るわ。本当にごめんなさい。」

「そんなっ…あたしがしたくてしたんだから、華央さんに謝ってもらうなんてことは…。」

「いいえ。これは私のけじめよ。
…蒼刃くん…だったわね。」

「ああ。」

「受け止めてくれてありがとう。
本当にいい目をしているのね。
…守ってね。彼女のこと。命に代えてもとは言わないけれど。」

「分かってる。…命に代えてもな。」



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