アクアマリンの秘密
星来が言うように、俺がどこかで華央であると感じていたのかどうかは…よく分からない。
だが…斬れなかった。

向こうは俺を殺す気でしかないと分かっていても…
それでもこの手で…



「俺は甘いな。それが良く分かった。」

「…紫紀が甘いから斬れなかったわけじゃないよ。
フェイを倒せなかったのは…紫紀が優しいから…。ただ…それだけ。」

「優しさは…甘さと同じだ。
それに俺は優しくなど…。」

「いや…紫紀は…そういう人間だよ。
それでも…斬ったんだろう?華央の薬指。」

「ああ。
それが華央の望みだったからな。最期の。」

「…最期の…望み…。」

「そうだ。
…あの時、守れなかった俺が…最期にしてやることが出来るのは…
華央の望みを叶えてやることぐらいだ。」

「…そうかもしれないね。
さぁ、右腕を出して。その傷が一番酷い。」


俺は大人しく右腕を出した。
他の部分はともかく、利き手である右腕は治してもらえなくては非常に困る。


「お前は大丈夫なのか?」

「あ、オレ?
うん。全然平気だよ。っていうのもなんだかヘンな話だけど…
怪我もしてなければ魔力の消費量もほとんどない。
だから紫紀の怪我を治すくらいはどうってことないよ。」


そう言って微笑む白斗。
俺に…気を遣っているのだろう。




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