アクアマリンの秘密
「え?」

「…今の俺は何するか分からねぇ…。
だから近寄んな。
お前にも…何するか分かんねぇ。」

「…何してもいいよ。」

「…?」

「あたしはどうなっても構わない。
だから…ここを開けて。
そんな蒼刃を一人にしておきたくない。」

「お前…本気で言ってんのか?」

「本気。
蒼刃が辛くて動けないなら…その痛みを分けて。」




あたしの言葉に蒼刃がドアの方へと近づいてくるのが分かった。
ゆっくりと一歩ずつ…それでも確かに。


今、あたしと蒼刃はドアを挟んで立っている。




「お前は…知ってるんだろう?
俺の記憶が…戻ったってこと。」

「うん。緑志から聞いた。」

「だったら…頼むから戻ってくれ。
俺の痛みなんか…貰うもんじゃねぇ。
俺は…お前を傷つけたくないんだよ。自分の手で。
お前を傷つけたら…俺は許せない。
自分を一生…許せねぇんだ。」


あまりにも苦しそうに搾り出されたその声に胸がきゅっと締めつけられる。
手を伸ばせば、きっと届くのに。


でもその手を今蒼刃が欲しいのかどうか…分からない。

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