アクアマリンの秘密
「だから…
あの状況を見て、なんて悲惨な姿なんだろうって思っても、星来みたく涙は出てこないんだ。
不思議だね…ボクの故郷なのに。」

「…っ……。桃依っ…!!」


あたしは桃依を抱きしめた。
桃依の記憶を視ちゃいけないって分かってた。
だけど…
今、桃依に触れずにいられなかった。


「桃依っ…桃依っ…。」


あたしは桃依の名前を呼ぶしかできなくて…
ただひたすらに名前を呼び続けた。

桃依も最初は驚いて体を固くしたけど、ゆっくりと力が抜けてきたみたいで、あたしにぎゅっと抱きついてくる。

あたしに桃依の想い、そして桃依の記憶が流れてくる。
これは…
桃依が覚えていない記憶…?
赤ちゃんだった頃、お母さんに抱っこされてる桃依。
上手く空が飛べなくて、お父さんに慰めてもらってる桃依。
どの桃依も…すごく幸せそうな顔をしてる。
その光景が余計、あたしの涙を増幅させる。


「ありがとう、星来。」

「…え…っ…?」

「星来の涙は温かいよ。
だからボクは寂しくない。
ボクの代わりに泣いてくれて…ありがとう。」


桃依の言葉にまた何も言えなくなって、あたしは泣き続けた。


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