アクアマリンの秘密
「え…?」

「お願い…斬らないで。」

「…。」



基本的に、俺はこいつの涙には弱い。
涙声で俺に物を頼むなんて卑怯だ。



「…お前…何言ってんのか分かってんのか?」

「…勝手だって分かってる。でも…その人は…今はビシアスだけど…華央さんと同じなの…。
あたしの…たった一人のお兄様なの…。」



んなもん分かってる。
俺だって…「ジャニア」ではなかった頃のこいつを知っている。
髪は今のような燃えるような赤ではなく、目つきだってもっと優しかったこいつを知ってる。飄々とした態度は変わらねぇけど。
何より…お前を大切にしていたこいつを…知ってる。





「んなもん、分かってんだよ。
だけど…どうしようもねぇだろ?
ビシアスは倒すべき相手。
それに…こいつも消滅を望んでいる。」

「え…?」

「その通りだ。
俺は…いや…氷泡月叉はもう助からない。
細い糸一本で繋がっているような命だ。
それは…俺に触れて分かっただろう?」

「…。」



何も言わないところを見れば、そうなのだろう。
月叉の命は…消えかけていた。
そこを故意に歪められた。
…イアルに。



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