アクアマリンの秘密
「母上…?」



目の前にゆっくりと母上が舞い降りてきた。



「ごめんなさいね、緑志。
あなたにあんなに暴言を吐くとは…
戦い辛かったでしょう?」

「…そんなこと…。」

「随分立派になったのね。
あなたの成長を近くで見守りたかったと、心の底から思うわ。
もちろんあなただけじゃなく、蒼刃の成長も…。」


その表情は、僕の知っている母上の、愛に満ちたものだった。
その表情を見つめていると、なんだか無性に小さかった頃に戻った気分になってくる。



「私は…あなたを救わなければ良かったなんてこれっぽっちも思っていないわ。
あなたに蒼刃を押しつけるような形になってしまったのを、少し心配していたけれど…。
でもあなただから、きっとしっかり…蒼刃と一緒に生きてくれると信じていた。
私の読みはどうやら当たっていたみたいだし。」

「…そうでもないです。
僕はやっぱり…蒼刃には及ばない。
蒼刃に僕が必要なのではなくて、僕に蒼刃が必要なだけで…むしろ僕は重荷かもしれません。」

「蒼刃に及ぶ必要がどこにあるの?」

「え?」

「緑志は緑志、蒼刃は蒼刃。
私はあなたたちをそういう風に育ててきたつもりだったけど?」

「それは…。」

「蒼刃が背中を任せられるのは緑志、あなただけよ。
…強さはね、目に見える強さだけではないの。
確かに蒼刃の戦闘能力は素晴らしいわ。
でもだからと言ってあなたが引け目を感じなくてはならない理由にはならないと思うの。」


母上が僕の両手を優しく包んだ。



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