アクアマリンの秘密
「…俺も…大事なやつを守りたいんだ。
出来るならこの手で。
だけど…まだ俺には足りねぇところがいっぱいあって、不甲斐なさを感じたりしないこともねぇんだけど…。」

「そこは…今一緒にいる仲間がフォローしてくれているのだろう?
それぞれ違う能力を持った仲間たちが。」

「…まぁな。
あいつらがいてくれるから、俺は何の迷いもなく斬っていけるんだろ、多分。」

「確かに、仲間に…そして大切な人間に救われている部分は少なからずあるだろう。
だが…お前は今、たった一人で敵に立ち向かい、そして斬り倒した。
それはお前の強さだと言える。
大切な人とは隔離された状況にある今、お前はどうしてもその子の元へと戻りたい。そう強く思ったのではないか?
それが…お前の動きをより機敏にさせた。想いがお前を動かしたんだ。」


真剣な眼差しで俺を見つめる父さん。
思い出の中では、俺のことをそんな目で見ていなかったはずだ。
…そう思うと、『もしかしたら』って気持ちが余計膨らむ。
そんなもの、叶うはずのない未来なのに。


「お前と…もっと色々語り合いたかった。
強さのことも、他のことも。教えてやりたいこともたくさんあった。
もう父として何も出来ないことが…悔しくもある。」


んなこと言うんじゃねぇよ…。
これが最期なのだと思うと、変なものが込み上げてくんだろ?


「一番大切な教えは…父さんの強さの理由だ。
その教えは…俺の中で一生生きる。」

「…そうだな。それでいい。
さぁ、そこの回廊を進め。
お前が鏡を割ったから、おそらく回廊で緑志に出会えるだろう。
大切な人間を守るために生きろ、蒼刃。」

「ああ。」



もう後ろは振り返らなかった。
だから走りながら、叫んだ。



「父さんみたく…大事なものを守れるように…強くなるからな!!」



いつものように低くて穏やかな「ああ。頑張れ、蒼刃。」という声が耳に届いた。
それだけで俺が前に進むには充分だった。




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