アクアマリンの秘密
* * *


いつだったんだろう…
私が捨てられたのは。
捨てられる前と捨てられた後で変わったこともそんなに無かったような気さえする。



家族との楽しい思い出なんてものは存在しない。
3歳ほど離れた兄と私ではそもそも扱いが違いすぎた。
私は家庭の中では出来損ないだった。
兄は頭も良く、容姿も優れていてどこか人を惹きつける魅力があった。
だが、私には何もなかった。
だからいつの間にか捨てられていたのだろうか。



しかし、両親にはある意味感謝している。
幼少期の私を捨てずにいてくれたことを。
私の身体が『使いもの』になるような年齢になってから捨ててくれたことを。



私は毎晩毎晩違う人間に抱かれ、生きるための金を稼いだ。
行為自体はどうでも良かった。
相手は女でも男でも良かった。
快楽にも興味などなかった。
そもそも、私は何をしても満たされることなどなかったのだ。



時々妊娠もした。
それをタテに、多額の金を請求することが出来たこともある。
もちろん金の一部は妊娠をなかったことにするために使っていた。



そうしていつの間にか、妊娠出来ない身体になっていた。


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