アクアマリンの秘密
どこへ向かおうとしているのか分からなかった。
だが、ただ一つ確かなのは死体の数がどんどん増えているということだった。
どこへ行っても、足元にはもう物言わぬ無残な亡骸が横たわっている。


目を開けたまま逝ってしまった亡骸のそばに近寄った。
まだ、自分が死んだことも分かっていないに違いない。

私はその人間の瞼を下ろす。



「これで逝けるだろう。」



弔いの言葉をそこに置く。





時間が経つにつれ、人の気配が失われていく。
それはただ単純に皆が死んでいるからだった。

大人も子供も、男も女も関係なかった。
どんな人間も片手には凶器を持ち、目の前の相手を殺し、知らぬ誰かに殺された。
ただそれだけの現実。






「まだこの国で生きている人間はいるのだろうか…?」




元々そんなに大きな国ではない。
これだけ死ねば、もう生きている人がいることすら考えにくいが…。
なぜこうなったかだけは考えたい。
生き残ってしまった身としては…。

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