アクアマリンの秘密
それでもそれを愛ではないと認めなかったのは、やはり手放せなかったからだと思う。
イアル様を手放すことは死にも繋がったし、どこか…惹かれてもいたのだろう。

この気持ちを『愛』と呼ぶのかは分からない。

それでも…私は…



「哀しいだけなら…終わらせましょう、セリユ。
あなたが辛いだけだよ。
今まで…辛かったでしょう?」














何も分からず、ただ記憶を失った能天気な姫だと思っていた。
都合のよい人間だと思って、心の中で罵っていたこともある。
それほどまでに…この娘は…私が欲しいと願うものばかりを持っていた。
それも…さも、当たり前のように。

それに、私に残された唯一の存在であるイアル様までを奪おうとしていた。
イアル様が欲しいのは、他の誰でもなくこの姫だった。

イアル様にとっては…最初から私などいらぬ存在だったのだ。
それも分かっていた。心のどこかで。

イアル様は…私を女としてそばに置いておいたわけじゃない、と。

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