アクアマリンの秘密
姫君のことを女としてそばに置いておきたいわけでもないとも知っていた。
私も姫君もイアル様にとっては『道具』なのだ。

姫君はイアル様の願いを叶えるための、最も使える道具。
そして私は…有能な剣士という道具。

だけど…私よりも大切に思われている姫君に嫉妬の念を抱かずにはいられなかった。

憎んでいた、はずだった。
それなのに…








この姫君は私の想いに触れて涙し、私をこの歪みから解き放とうと必死に言葉を投げかけ、私をとても優しく抱き締めた…

彼女に抱き締められて…ようやくはっきりと自覚する。
イアル様の抱擁は本当に仮初で、嘘だらけだったということに。

愛に飢えた私は、それに気付いていても見ぬふりをした。

でも、愛に満ちた少女の抱擁を受けた私にはもう、それは出来ない。












「お前のような人間は初めてだ、氷泡星来。」



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