アクアマリンの秘密
「え?」

「どうして本気になれる?
私なんかのために…。」

「あなたがあたし私を見つめる目が本気だから…。
あたしも本気で向かい合わないと、分かり合うことはできないでしょう?」

「分かり合う?」

「そう。
あたしには…あなたが敵だからどうしたいとかそういう気持ちは一切ないわ。
あなたは敵である前に『セリユ』という一人の人間。
だからあたしは『セリユ』という人間を知りたいの。
というか…セリユって偽名なのよね。イアルに与えられた名前でしょう?
本当の名前は…思い出せた?」

「本当の名前…。」



心の奥底に眠らせた、私の名前…



「如月…瑠香(キサラギルカ)。」

「瑠香?」

「…幼き頃…そう呼ばれていた。」

「瑠香…いい響きね。」

「…呼ばれた記憶などほぼないに等しい名前に、何の思い出もないがな。」

「じゃああたしが呼ぶわよ。
そしたら段々自分に馴染んでくるでしょう?
名前って呼ばれていくうちに自分のものになるものよ。」



屈託なく笑う姫。
…彼女に私と同じ道を歩ませるわけにはいかない。
そう強く思った。



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