アクアマリンの秘密
私を貫いた剣がゆっくりと抜かれた。
その途端に血が噴き出す。



「きゃっ…!!瑠香っ!!!!」


泣きそうな声で私の元へと駆け寄ってくる姫君。


「なんてことを…。」

「裏切り者は処刑される。
これは繰り返されてきた人間の歴史だ。」

「瑠香が今までなんであなたと一緒にいたのか…あなたは分かる?」

「瑠香…?あぁ…本当の名前か。そんなものを思い出すとは…愚かな女よ…。
興味はまるでないな、星来。
この女が何を考えようが思おうが、私には関係がない。」


姫君が私を抱き寄せる。


「瑠香っ…ダメ…死んじゃ…ダメ…。」


声が震えているのが分かる。
私の視界はかなりぼやけているため、その顔まではしっかりと見えない。
貫かれた部分から徐々に冷たくなっていく感覚が私を支配する。

私の顔に、冷たい雫が落ちてきた。
それでようやく姫君の表情が分かる。
…泣いているのだ。


この姫の思考はおかしい。
…なぜ、泣くのだろう。
私は『敵』だというのに。



「あなたは…敵じゃないわ。」


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