アクアマリンの秘密
紫紀さんのミサンガに触れた。


紫紀さんには…何度命の危機を救ってもらったか分からない。
エバーラスティングウイングでのマイサとの戦いの中で、考えなしの行動をとったあたしを助けてくれたのは…紛れもなく紫紀さんだった。


口数は少ないし、表情は全くと言っていいほど変わらない。
でも…その想いはずっと強いってことが眼差しで分かった。
そして本当はすごく優しいってことも。
何も言わないけど、心の中ではみんなのことをとても心配しているってことも。


フェイとの戦いでは本当に辛そうで、見ていられなかった。
斬りたいと本気で思っているようにはどうしても見えなかった。
心のどこかで、あれがフェイではなく華央さんなんだって分かってるようにも見えた。


今でもあたしがしたことが正しかったのかどうか分からない。
それでも…あたしは信じている。
紫紀さんの言ってくれた、あの言葉。


「…華央に華央としての『死』を与えてくれてありがとう。
そして…俺を守ってくれて…ありがとう。」


紫紀さんのくれた…ありがとうの言葉を、今もまだあたしはちゃんと覚えてる。
あの後、雪の中で紫紀さんと話したことは…今でも忘れられない。
ああしてゆっくり話すことが出来たのも初めてだったし、紫紀さんが華央さんを想って紡いだ言葉はどれも、温かくて優しかったから。
本当に愛おしそうな目で話す紫紀さんが、なんだか本当の紫紀さんなんだなって思えて、すごくすごく嬉しかった。


「紫紀さんは…あたしの無茶を呆れるかもしれませんね。
でもいいです、呆れてください。
…ありがとうございました。」


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