アクアマリンの秘密
「忘れたく…ない…っ…。」



忘れたくないよ。
みんながくれた思い出の中に、忘れたいものなんか一つもない。
苦しいこともいっぱいあったし、たくさん泣いた。
でも…笑顔もたくさんあったから。
みんなの優しさに触れることが出来て、あたしは本当に幸せだったから。




「思い出の男の子は…蒼刃だったんだね。
…忘れててごめんね。
あの話をした時の蒼刃が少し変だったってことには気付いたのに…。
…っていうかあたし、あれが初恋とか言っちゃってたんだっけ?今更だけど恥ずかしいことばっか言ってるね。
恥ずかしいところ、いっぱい見られた気がするし。」


蒼刃の返事はもちろんない。
今動いているのはあたしの時間だけだから。


「蒼刃…きっと怒るよね。
あたし…勝手なことしようとしてるもん。
あたしのこと…守ろうとしてくれてるのに…。
でも…やっぱりみんなに生きてて欲しいから。」


あたしは血まみれになった蒼刃の頬に触れた。


「…傷だらけ。
本当はあたしが癒してあげたかったけど…もう時間がない…。」





瑠香が残してくれた時間は3分。
もう2分半は経ってる。


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