アクアマリンの秘密
思わずそっちを向いてしまいそうになる。
向いたら…あたしは戻れなくなる。
だから必死でその声を無視した。



「無視すんな!!
お前…何やってんだよ!!こんなこと…。
魔力の使い過ぎで死んじまう!!」




あたしの身体は今、浮いていた。
だから蒼刃には近付けない。




「止めろ!!おい桃依!!フライかけろ。」

「ダメ。今のあたしに近付かないで。」

「じゃあ降りてこい!!」

「出来ない。」

「星来!!」



呼ばないで、そんな風に。
…もう少しなの。『封印の魔法』が完成するまで。
完成したら、ミサンガにかけた魔法がみんなに届くはず。
あたしの想いを…ミサンガに託したから。
だからそれを聞いたら納得してほしい。あたしが今してること。



「お前、約束破るのかよ。俺の話聞くって約束しただろ…?」

「約束…守れなくてごめんね。」



あたしは蒼刃の目を見つめてそう言った。
もしかしたら…『蒼刃』をこの目に映すことが出来るのは最後かもしれないから。
少しでも目に焼きつけたくて、我慢出来なかった。




記憶が完全に身体から出たのを感じた。
それが鎖となって、イアルの身体に纏わりつく。

イアルの身体が眩く光った。

それが今のあたし、『氷泡星来』が見た最後の光景だった。

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