アクアマリンの秘密
声が…出ない。
何を言えばいいのか分からない。
そんなのが正直な気持ちだった。

それを察したのか、俺からすっと手を引く国王。



「『若いからすぐ傷も癒えよう』などと綺麗事を言うつもりなんてさらさらない。
…確かにそなたたちは若いから、わしよりも何倍も回復力があるじゃろう。
だがな、それが傷付いていい理由にはならんのじゃよ。
若いから傷付いてもすぐ癒えるなんて嘘じゃ。
傷付かなくては手に入れられないような強さなら、いらんと思う者もいるかもしれんしな。
どんな人間だって、心も身体も傷付きたくなんかないはずじゃ。
このわしだってそうだ。どんなに年を重ねても、傷付くことは怖い。
そなたたちを甘やかしたいわけではない。じゃが…なるべくならば…傷付かずに生きてほしいと願っていた。
それが叶わぬ…と知っていたからかもしれん。」



独り言のようにそう吐き出す国王。
自分たちのことを言われているはずなのに、どこか遠い話に聞こえる。











「さて…全てを話そうかの。
そなたたちが知らぬ真実というものがある。
そなたたちはこの大いなる戦いの当事者だ。
全てを知る権利も…そして責任もあるじゃろう。
もちろんわしには全てを話す義務がある。
…っとその前に、まずは治療が先じゃな。
全員の傷を完治させるわけにはいかぬが、せめて出血くらいは…
特に蒼刃。そなたの出血は…。」

「いらねぇ。治療なんて。」


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