アクアマリンの秘密
「全ての感覚が麻痺している今はそうかもしれんが、お前さんの怪我は予想以上に酷いぞ。」

「俺の治療はいらねぇっつってんだろ。
いいからこいつをどうにかしろよ!!」

「それは…出来ぬ。
こちらから何をしても無駄じゃ。
記憶についても、目覚めについても。」

「目覚め…?」

「記憶は…月叉からもう聞いたじゃろう?
記憶はもう戻らぬ。もう二度と、決してな。
そして星来の目覚めも…今は待つしかない。」

「待つしかない?どういうことだよ…。」

「こちらからどんな魔法を施したところで星来は目覚めぬ。
自然に目覚めるのを待つしかない…。」

「じゃあこいつがいつ目覚めるのか…。」

「それは分からない。
…もしかしたら目覚めは明日かもしれん。じゃが…1年後、いやもしくはもっと後かもしれないのじゃ。」

「1年…。」

「1年というのは言いすぎかもしれぬし、足りないかもしれぬ。
…とにかくこの魔法は本当に幻の、そして伝説の魔法なのじゃ。
わしの魔力では…月星の魔導書でこのページを開くことは叶わなかった。
幸か不幸か…星来だけが本当に選ばれたのじゃ。」



…目覚めを待つしか出来ない自分の無力さを呪いたくなる。
正気に戻ってきたのか、全身を痛みが襲う。



「…っ…てぇ…。」

「無理をするでない。
…酷いのは腕と頭だな。
どれ…『ヒール』」


ふわっと腕に温かい光が当たる。

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