アクアマリンの秘密
その魔法は完璧だった。
痛みも傷も瞬時に癒えた。
でも…何かが足りない。



「目に見える傷は完全に癒せても、心の傷はわしには癒せない。
そう言いたそうな目じゃな、蒼刃よ。」

「…。」

「なんとも素直な目じゃ。
わしはお前のその真っすぐな目をとても気に入っておる。
そんな哀しい目しかさせてやれないことが今…非常に歯痒い。」



俺はまだ国王と上手く目を合わせることが出来ないでいる。
焦点が合わない。
それほどまでに…なんだか上手く言葉に出来ないほど動揺していた。


最初にこいつに会った時だって、こいつは記憶を失ってた。
単純に考えればその時に戻るだけだ。
…戻るだけ…だっていうのに…。


「『戻る』のとは…何かが違ぇんだよ…。」


















積み重ねてきたものが違いすぎる。
昔と今とじゃ、まるで。

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