アクアマリンの秘密
「イアルの目的は早い段階で読めていた。
星来をも自分の手駒にしたいと考えていたのもな。
ビシアスまで作ったのには正直驚いたがの。」

「イアル様は…星来の精神を壊し、その力だけを我が物にしようとしておりました。」

「左様。
イアルは星来を自身の最大の武器として国を作ることを画策しておったのじゃ。
じゃからわしは…何よりもまず、星来の身の安全を守ることを考えた。
いずれ、アクアマリンにも魔の手は伸びる。
その時に星来を無事に逃がすことの出来る国を作ること、そして星来の魔力を開花させぬこと、この二つがわしの最大の目標だったのじゃ。
じゃから他の国々への援助は大幅に遅れ、そして大した連携も出来なかった。
ゆえに、華央、燈龍、美音殿…多くの犠牲を出すことになってしまった。」

「なぜ…星来の魔力を開花させなかったのですか?」

「開花させてしまっては、星来を逃がした時に星来の場所が分かられてしまうからじゃ。
それを考慮し、月叉も最後に星来の記憶を一時的に消す魔法をかけた。」

「強い魔力がイアルに居場所を知らせる…ということですか?」

「そうじゃ。
じゃが…全てはわしの魔力が衰えてきたことも関係しているかもしれぬのぉ…。
わしの魔力は大幅に弱ってしまっていた。年とともにな。
このままの魔力じゃ、アクアマリンを守ることすら出来ぬことも知っておった。
もちろん他の国を守ることなんてもってのほかじゃった…。
滅びはどの国にも訪れると知っておったからこそ、生き残った者たちに安息の地をと思ってナチュラルアースを…作ったのじゃ。
年寄りは良くないのぉ…最初から諦めてしまう。
もちろん国を守るための最大限の努力はした。
じゃが…『無茶』というものは出来なくなってしまうものじゃ…。
これも年じゃからかの…。」

「でもおじい様の結界はとても強かった…。
だからナチュラルアースは…。」

「ジャニアとマイサに結界は破られた。
あれがもはやわしの限界じゃ。
ナチュラルアースの結界が破られた際にわしを眠らせたのは良い判断じゃった。
いや…わしだけじゃのうて、皆を眠らせたのは実に良い判断じゃった。
時を止められた人間に、イアルは何も出来ぬからの。」

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